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最高裁判所第二小法廷 平成2年(オ)570号 判決

上告人

妙真寺

右代表者代表役員

早瀬義寛

右訴訟代理人弁護士

宮川種一郎

松本保三

被上告人

山口法興

右訴訟代理人弁護士

小見山繁

河合怜

川村幸信

山野一郎

小坂嘉幸

江藤鉄兵

加藤洪太郎

富田政義

華学昭博

片井輝夫

伊達健太郎

仲田哲

竹之内明

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人色川幸太郎、同川島武宜、同宮川種一郎、同松本保三、同松井一彦、同中根宏、同中川徹也、同猪熊重二、同桐ケ谷章、同八尋頼雄、同福島啓充、同宮山雅行、同若旅一夫、同千葉隆一、同吉田麻臣、同漆原良夫、同小林芳夫、同松村光晃、同石井次治の上告理由について

一  上告人の請求は、宗教法人である上告人が、本件建物の所有権に基づき、被上告人に対し、その明渡しを求めるものであるが、原審は、最高裁昭和六一年(オ)第九四三号平成元年九月八日第二小法廷判決・民集四三巻八号八八九頁を引用し、要旨、次のとおりの判断を示して、本件訴えを却下した。

本件における最も重要な争点は、上告人の包括宗教法人である日蓮正宗の管長として被上告人に対する懲戒処分を行った阿部日顕が管長の地位を有するか否かであるが、管長は宗教団体である日蓮正宗の法主の地位にある者をもって充てるものとされているから、本件訴えは、阿部日顕が法主の地位に就任したか否かの判断を必要不可欠の前提とする。しかし、日蓮正宗においては、法主は血脈を相承した者とされているので、阿部日顕が法主の地位にあるか否かを判断するためには、日蓮正宗における血脈相承の意義を明らかにした上で、同人が血脈を相承したか否かを審理判断しなければならない。そのためには、日蓮正宗における教義ないし信仰の内容に立ち入って審理判断しなければならないことになるから、結局、本件は、その実質において、裁判所法三条にいう「法律上の争訟」には当たらない。

二  所論は、原審の右の判断の違憲、違法をいうが、本件記録によって認められる上告人が本件訴訟を提起するに至った本件紛争の経緯及び当事者双方の主張並びに本件訴訟の経過に照らせば、本件訴訟の争点を判断するには、宗教上の教義ないし信仰の内容について一定の評価をすることを避けることができないことは否定し得ないのであるから、本件訴えを却下すべきものとした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、右違法のあることを前提とする所論違憲の主張は、その前提を欠く。論旨は採用することができない。

よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官木崎良平 裁判官藤島昭 裁判官中島敏次郎 裁判官大西勝也)

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